[ 飾台 ]

雛人形の選び方(6) [セットを見て選ぶ 「飾り台編」]

「縁の下の力持ち」という言葉のように、飾り台というものがあります。

多くの方は、この「飾り台」というものが存在することや、
この台一つで値段が大きく変わるという事を知りません。
今回はこの飾り台について、少々ご案内をしたいと思います。

そもそも飾る際に敷く板や布について

雛人形を飾る際には、飾る場所を限定・制限するというか指定するという意味もあって
「毛氈」や「飾り台」を置きます。

毛氈は赤い敷布で、以下のようなものを指します。

そして飾り台とは、一枚の板のもの、もしくはその板を装飾したり加工したりしたものを言い、同じく雛人形を飾る場所に置きます。
簡単に言うと「セット全体を支えている板」の事を指します。
以下の黒い台はその代表的なタイプです。

「毛氈」を敷く「毛氈飾り」とは

飾り台は親王飾りというお殿様とお姫様の二人だけの飾りの際に使われます。
また、赤い毛氈のみを敷く「毛氈飾り」という飾り方をする場合はこの飾り台は不要とされます。
以下が毛氈飾りの例です。

※これは令和3年用高島屋の商品です。

毛氈飾りのメリット(良い点)

毛氈飾りは、京都のお雛様の飾り方に多く毛氈によって赤い空間を演出することから、
・雛祭りらしさを感じられる。
・伝統的で古典的な印象を感じられる。
・人形の格が高いと、より一層の品格が醸し出される。
という見方ができます。

毛氈の大きさによって飾るスペースを限定できるので、飾り場所にピッタリの大きさに毛氈を好きな大きさに裁断すれば見た目も綺麗に飾れます。

毛氈飾りのデメリット

メリットもあればデメリットもあります。
・色の種類や質感が限定されているので、おうちのインテリアやデザインを意識して統一している方からは選ばれにくいという現状でもありあます。
 →これについては、「毛氈」であるがゆえに仕方がない部分もあります。
 布なので柔らかい印象、赤なのでビビッドな印象、そして和風な印象といったことから、どうしても家に合わないということはあります。

・毛氈の種類によって品質に雲泥の差が出る。
 一言で毛氈といっても様々です。
 一番安価なタイプはメルトンという化学繊維で織られた毛氈です。
 硬くて型がついたら戻りにくいです。手触りや視覚的な印象も安っぽさを感じます。
 一般的にお雛様を購入するとサービスでついてくるものです。
 

そして品質のいいものはウールで織られたもの、厚みも3mm程度はあるものです。

ウールは100%も良いのですが60%以上であると、手触りや使用感に差が出ます。
良い毛氈は高価なので、高価な雛人形にはセットで使われていると思いますが、一般的なお雛様においてはウール混がサービスでつくことはあまり無いように思います。
 ※ちなみに「ひなのすすめ」でお雛様をお選びした場合は、ウール60%レーヨン40%の高品質の臙脂色毛氈をお付けしています。

「飾り台」の基本について

では、次に飾り台を紹介いたします。

基本的なタイプの特徴は以下となります。
・黒塗りで艶がある
・一枚板である
・MDF(中質繊維板・中密度繊維板)である

ひとつづ見ていきましょう

基本タイプ特徴の1「黒塗り艶あり」

黒く塗ってある飾り台は基本中の基本です。
まず、黒という色は、素材を全く持って隠してしまう効果があります。
つまり、素材が木材でも合板でも樹脂でも構いません。黒く厚く塗れば同じです。
そして塗料によって光沢・艶が出ます。磨きも大掛かりにしなくても綺麗になります。
そして艶ありタイプというのは、万が一キズがついても、そこを「磨く」ことで傷を消すことができます。

作りやすく扱いやすいのが、黒塗艶ありなのです。

そして、多くの方が勘違いしていることですからちゃんとお伝えすると、
雛人形における「塗り物」において「漆塗り」は存在しないということです。
多くの場合、化学塗料による塗装です。
新漆(しんうるし)などとよばれることもある「カシュー漆」でさえありません。

基本タイプ特徴の2「一枚もの」

一枚状のものであり、加工がほとんどされていないものが基本です。
面取り加工や猫足加工などをすると価格が上がります。組み合わせ加工をするとさらにギャップ調整が必要になりますし、デザイン加工なども大変です。
加工にあたって手間暇がかかるだけでなく、加工に必要な工具や機器も要ります。作業者の習熟度も仕上がりに左右します。
なので、
無加工の一枚ものが一番基本でありコストを掛けないで作ることができます。

基本タイプ特徴の3「MDF(中質繊維板・中密度繊維板)」

wikiでは「木材チップを蒸煮・解繊したものに接着剤となる合成樹脂を加え板状に熱圧成型したもの」
という説明があります。

簡単に言うと、廃材や端材などを細かく砕いてそれを素材として成型する作り方です。
もともとが端材や廃材なのでコストを掛けずに作れる上に、木材特有の「反り」や「狂い」がほぼありません。
表面は固くなめらかで、内部は緻密になります。
これにより、木材特有のクレームがほぼありません。

無垢材にこだわる方は、経年による反りを許容しなくてはいけません。反りが出ない位まで乾燥・保管した木材はもっともっとずっと高価なのです。

基本タイプのまとめ

雛人形本体や屏風などに原価がかかりすぎているため「飾り台のコスト」を下げる必要がある場合、このタイプの飾り台を使うことがあります。
もしくは、
そもそも安価なセットに仕上げたい場合、
「飾り台」に対してあまり価値を感じていない場合(飾り台なんてなんでもいいという意識の場合)、
などもこういう基本タイプを使います。

たしかに、飾り台に費用をかけすぎるのは本末転倒というか、
例えば凝りに凝った飾り台が5万円するなら、飾り台をやめて安価なメルトン毛氈にして、雛人形本体に5万円上乗せした方がいいと思います。

「飾り台」の種類について

そうはいっても、モダンな飾り台や機能的な飾り台も魅力的なのも確かです。

四方菱面取り加工

これは四方を上下ともに面取りして菱型にした飾り台です。



加工の手間がかなりかかります。裏返すと、反り防止の工夫もいろいろとされています。※それでも反る事もありますが。

面取り浮遊陰影 隠し足付き

次にこちらは、全面と左右を面取り加工し、底に四角い足をつけています。これにより、飾り台は浮遊したような陰影が生み出され、もともとのシャープな作りも相まって、お洒落でモダンな雰囲気になっています。

<前面からの見え方>

<背面のつくり>

<裏返すと、接地面はちいさな四角い部分のみとなっており、飾り台よりもちいさなスペースに飾れるというメリットもあります。>

越前塗(ベージュ色) オーバル型足付き

こちらはオーバルに加工した飾り台です。
柔らかい印象であり、仕様には「越前塗」とあります。
※伝統工芸品の指定がある「越前漆器」とは記載されていないため、本漆ではないと思います。
モダンな印象ですが、高価です。(4~6万位と思います)

凸凹(でこぼこ)型組み合わせ台

こちらは、組み合わせ式です。色も金泥色にされたモダンな配色。
一枚の板を二つに分け、それぞれに足をつけています。片づける際に約半分の大きさになります。
ただし、足をそれぞれにつけることから、二枚の板の接続部分において多少のギャップ(高さ違い)が生じます。
製造時に調整されていますが、湿度や設置場所によってギャップが出てしまいますので、そういった調整の手間暇もかかります。

猫足アンティーク調

こちらは猫足と呼ばれる歪曲した足が付いた台です。
※屏風も写真に乗っていますが屏風は無視してください。
アンティークな家具などにもこういった加工された足がついていますが、同様の感覚で作られたと思います。
足を作るのが大変ですよね。価格も上がります。

その他さまざまな飾り台たち

これ以外にも本当にたくさんの飾り台があります。
そして飾り台によって効果的に限定された空間を演出しているセットもあります。

こちらは木目を活かした現代的な建築に合いそうですね。
無垢材ではなく突板ですので多少価格は抑えられていますがそれでも2万~位と思います。

コチラは、杉の木枠の中に、別珍(ベルベットやベロア、コーデュロイ等と同じパイル(添毛<てんもう>)織物」の一つ)を貼り、日本的かつモダンというデザインの飾り台です。
素敵で、飾り台でありながら限定空間を上品に演出しています。高価です(笑)

こちらは銀色の塗装です。このような冷たい印象の飾り台は、人形や屏風を合わせるのが難しいです。
このセットでは人形がビビッドな単色という特徴的な作品であり、屏風などもシンプルにセットされています。
銀の印象を、うまく変換して組み合わせています。

これは五月人形の写真ですが、飾り台としては豪華な立雛などにも使います。
飾り台の装飾がすごいですね。古代のヨーロッパ建築のような。おそらく額縁の枠を使った飾り台ではないかと思います。
上に乗せる作品は、相当のものでなくてないけないでしょう。

飾り台の見方とまとめ

今回は脇役の中でもさらに目が向かない「飾り台」についてご案内しました。

雛人形を選ぶ際に、飾り台をよく見て、不要なら省くことも必要です。
飾り台は安くても一万円以上はしますし、京十番サイズの雛人形を乗せる場合の一般的な飾り台の価格は税込み二万円前後します。

見た目豪華で派手な物は高いですので、
お店の人にも、それを省いてその分良い人形を選びたいと伝えれば、多くのお店では快く答えてくれると思います。
※お店の心理としては、飾り台よりも、良い人形を売りたいものです。飾り台をやめてもその分良い人形を選んでくれれば、人形屋冥利に尽きるというものです。

以上、今回は「飾り台」を簡単にご案内しました。

あまり見られない装具に関してこれらかも記事を投稿していきますので、
良ければまた当ブログを見てやってください。