御節句の言葉には、一般生活に馴染みのない言葉がたくさんあります。
それを丁寧にお客様に説明できるようになれば、お客様との信頼が築けていけます。
雛人形業界における知識 [黄櫨染(こうろぜん) ]
これは衣装およびその染め色の名称です。
そして、雛人形を販売する上で、まず最初に知っておくと便利なワードです。
この言葉を知るだけで、この衣装の雛人形を販売することができます。
そして、黄櫨染の雛人形といえば殿が主役の雛人形のことでありこの言葉において姫の事は一切触れられていません。
黄櫨染とは
ここで改めて詳しく書かなくても、それこそ山のように情報がでてきますので簡単に説明します。
黄櫨染とは、天皇が格式ある儀式で着用する衣服の色です。
特別な理由を箇条書きします。
・第一礼装の御袍(ごほう)の色である
・天皇以外使用不可の絶対禁色(きんじき)である。
・格式の高い文の「桐竹鳳凰麒麟」が織られている。
・染めは同じ色を安定して出すことは難しい。
これは「人形工房 松寿」の京十番 正絹 黄櫨染の殿の胸元にある「桐竹鳳凰麒麟文」です。
雛人形業界における殿の意味合い
女性の一生の御守りという意味合いの雛人形、
そしてその「形」は婚礼を想起させるものであります。
所説ありますが、この形は、殿姫を幸せな婚礼の象徴ととらえる一方、
天皇の婚礼を元にした創作とする考えもあります。
そういった場合、殿が黄櫨染を着用していることは伝統・権威・格式という面において重要な意味をもちます。
つまり、黄櫨染の雛人形は、そういった伝統・権威・格式を重んじる価値観の人に非常に好まれる傾向があります。
また、対外的な評価を気にしなければいけない方においても同様です。
販売に至るルート
このような背景を持つ雛人形は珍しいです。
国としての歴史・伝統・権威・格式を併せ持ち、大人好みの色と秀逸な文様を持つ衣装。
お客様の好みにもよりますが、そういった価値観をお持ちの方にお勧めすると受け入れられやすいですし、
そもそも、雛人形の見方が全く分からないという方へ、こういった見方でお雛様を見ると楽しいですよという入り口にもなります。
・店として、比較のために必要
・新人が雛人形の説明を練習するために必要
・知識の浅いお客様へ、分かりやすい見本として必要
・伝統や格式を重んじるお客様への提案として必要
黄櫨染の説明は、ある意味「日本」の説明も兼ねていると思います。
そういう意味でも、雛人形の入り口であると思いますし、黄櫨染の雛人形が必要なのはそういう事です。
初心者は黄櫨染で雛人形を勉強しよう
一口に黄櫨染の雛人形と言っても各メーカーによって
・黄櫨染の色が違う
・桐竹鳳凰麒麟紋の織りのデザインが違う
・そもそも織の細かさ・粗さが違う
・着せ付けもちがう
・生地の素材がちがう
・姫の衣装が全く違う(黄櫨染とは殿の衣装の事のみをさすため)
などが出てきます。
各メーカーが同じ意匠(衣装ではない)の雛人形を作っているなんて
黄櫨染以外にはありえません。
ですから、初心者販売員は各メーカーの黄櫨染を見比べることで、上記の違いに気が付くようになりついには、
メーカー毎の違いが見えるようになります。
自社に複数メーカーの黄櫨染を販売している恵まれた環境であれば、勉強に使わない手はないですよ。
個人的に[黄櫨染(こうろぜん) ]はビギナー販売員向け商品だと思っています。
屏風の色は金屏風が似合うし、お花も桜橘が似合います。そういう装具も合わせやすいです。
そうやって周りの知識も一緒に身に着けやすいですね。
ちなみに、私が初めて販売したお雛様はケース入りの黄櫨染でした。〇〇年前の若かりし頃です(笑)