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「永年保証」「永久保証」はどこでもやってます。 [雛人形の保証」の話

よくある質問や相談にこういうものがあります。
「雛人形を買ったら保証はありますか?」

保証という概念をどのように質問しているか、質問する方もわかっていないので紹介したいと思います。

この記事は
・雛人形って保証があるの?
・汚れたら保証でなおしてくれるの?
・お顔が傷ついたら保証で対応してくれるの?
などなど、雛人形における「保証」について知りたい方向けの記事になります。

用途と保証について

例えば、電化製品であればメーカーで1年保証されていますが、
掃除機であればゴミを吸い取る仕事を、
洗濯機であればお洗濯する仕事をちゃんとすることが1年保証されており、
その間にゴミを吸い取れなくなったり洗濯できなくなればメーカー保証で修理や交換が行われるということです。
そしてそれは、自分で壊した場合は保証が適用されず、あくまで使っていて自然に故障した場合のみというのが一般的です。
つまり、用途があって保証があるわけです。

雛人形の用途と保証について

では雛人形に対して保証というのを考えてみます。

そもそも、雛人形はどのような使われ方を前提として作られているかというとそれは間違いなく
「観賞用」
として作られているという事です。

観賞用というのはその言葉通り、飾って見るものであり、物理的に遊びにつかったりするわけではないのです。
そのため、鑑賞できることを保証するということになりますが

鑑賞できなくなくということは、人形が著しく損傷している事となります。
人形が著しく損傷する理由は、自然には起きないのです。
おとした、ぶつけた、ペットがかんだ、地震でたおれた、
などなど事由はたくさんありますが、どれもが電化製品であっても保証されない事由ばかりです。

つまり、鑑賞目的の商品に対して保証を求めるという事自体が、
なんの保証を求めているかわかっていないということになります。

ニュアンスは異なるのですが誰でもわかるように簡単に言うと、
「雛人形には、電化製品のようなメーカー保証は無い」ということです。

それでも、壊れたら直してほしい

それはもちろんの話であって、人形のお顔に傷がついたり、髪がみだれたり、着物をよごしてしまったりといろいろ起こるでしょう。
それに対しては全く持って安心してほしいです。

ほとんどの人形屋は、ちゃんと対応します。
※「全部の人形屋」といえない理由は、私の知らない店もたくさんありますし、対応しないところも少なからずあるからです。

この「対応する」というのは、お客様の修理希望をしっかり聞いて対応方法を相談することを言います。

・具体的にどういう風にどうやって直すか、
 →お顔であれば、描きなおすのか作り直すのか、お顔を交換するのか、
 →着物であれば同じに直すのか、似ている生地でもよいのか、
 →シミを抜くだけか、染め直しが必要か

・具体的にどれくらいの期間がかかるか
 →いつまでに必要か、通常はどれくらいの期間かかるのか、
 まにあうのか、間に合わないならなぜまにあわないか、

・具体的な費用はいくらか
 →見積はどれくらいか、職人に物を見せないとわからないのか
 わからないにしても概算を提示してあげれるのか
 ※私のいる人形屋では費用をかけずにやってくれる場合もある
  →メーカーや職人に送らなくても、社内の技術で直せる場合は無料になる場合が多い
  実際、私もいろいろな修理は対応してきています。人形屋あるあるです。

というような話をちゃんとお客様とできるお店は信頼できます。
そして、このことを「保証」というように宣伝している店もあります。

言い方として永久対応保証というのが正しいとは思いますが、
購入から30年たっても50年たっても直したいという相談に来てくれれば一緒に考えますよっていう店です。
もちろんこれは修理費は無料ではないです
しかし、これが一番良い姿です。

独自の「修理対応保証」をしている店もある

そして、例外ですがお客様の責による修理を無料にする店もあります。
一例ですが木目込の真多呂人形さんでは以下のような特例を設定しています。


真多呂人形公式ネットショップでは、当店限定特典として、お客さまの責による指、お顔、小物道具の欠け、汚れなどの有償修理を、3回まで無償とさせていただく無料修理サービスを提供させていただいております。
※お顔の修理については、1回まで無償とさせていただきます。
※天災地変による大きな破損につきましては対象外とさせていただきます。

まとめると、「お顔の修理は1回、その他は3回まで。天災など「大きな破損」は不可。」ということです。

この回数制限、けっこう現実的な数字だと思います。

また、真多呂さんでは以下の保証も表記しています。


50年間の半世紀品質保証をさせていただいております。「公式ネットショップ」よりお買い求めいただきました真多呂人形が、ご購入後50年の間に破損した場合は、無償にて修理のご対応をさせていただきます。
※全くの同一復元は難しい場合があることを予めご了承ください。
※お客さまの責による破損ならびに天災地変による大きな破損につきましては保証外とさせていただきます。

この制度については、詳しくわからないのですが、
50年間において「自責」と「天災」を除く破損時の修理保証ということですが、
それはどういった状態なのか想像できません。
たとえば20年たって、髪が少しはげ落ちた状態でのお直しも可能なのか、購入する際に質問されてもよいかもしれません。

雛人形を「修理しない」という選択もある

まず、多くの方は雛人形をわざわざ修理しないとおもいますが、修理しないとしても理由があっての事でもあるのです。

雛人形はそもそも古来から「厄受け人形」という存在であったことから、
汚れたり傷がついたりすると、持ち主の穢れや厄を代わりに受けてくれているととらえてきました。
雛人形が痛んでいくのは、持ち主が健やかに成長する証でもあるという事です。
なので、それをわざわざ直すことは、厄をまた戻してしまうという考えもあったようです。

このことから、あえて修理をしないお店や、このようなお話を伝えるお店もあります。

私個人としては、よほど気に入っていたら直したらいいし、
あそんで傷つけたり汚したりした思い出もあるのであればそのままでもいいのではないかと思います。

まとめ ~個人的考え~

実際、修理保証があるからといって修理までする人は稀だと思います。
こと、1年に一回の飾りの雛人形ですので、今度・また今度というように修理に出す機会を伸ばし伸ばししてしまいがちです。
そもそも、修理する必要のないものですし。

保証制度を設定したりアピールするのは、購買意欲を後押しするためです。
安心感をもって購入できるからです。これも重要なことです。
わからないものを買うのに、一か八かで買うのと安心して買うのとでは全く違う買い物です。

ですが、多くの人形店はそのような保証制度をアピールしていなくても、
自分たちが販売したお人形の相談はいつまでたっても聞いてくれると思いますよ。