思い出の着物やタンスに眠ったままの着物をリメイクし、
世界に一つだけの雛人形を作る「きものひな」のご紹介です。
このきものひなですが、以前、きもの系Youtuberのすなおさんにご紹介いただきました。
↓実際の動画はこちらです
その反響も大きかったことから興味をもってご連絡をくださる方が多く、取り組みの内容自体を評価していただいておりました。
そして数名の視聴者の方からご依頼をいただきまして本当にありがとうございました。
今回の記事はその中から、実際の制作事例をご紹介させていただきたく思います。
雛人形のもととなった着物
今回は贅沢に二枚の着物を使い、殿と姫のそれぞれをデザインすることになりました。
お姫様には菊の総柄が織り込まれた羽織、お殿様には、少し薄い黒色の大島柄の着物をご用意。
ともに大切に使われてこられた衣装。
ただ、羽裏の可愛らしい梅柄の生地は非常に薄くなっており、勿体ないのですが使用を見送る事としました。
黒い大島の着物は、裏地に上下で二色の赤が使われており、
こちらは発色も良く状態も良かったので、使う事になりました。
通常は一枚の着物を使って殿・姫を作ります。
一枚の着物から柄や色の違いで印象の違う殿姫を作る場合もあれば、
共柄(ともがら)といい同じ雰囲気で一対にする場合もあります。
当初は、帯を送っていただき帯地での雛人形制作を検討しました。
しかしながら、
人間用では素敵な帯の柄ですが、お雛様に使う場合は柄が着物に入りきらないため
折角ですが、着物での再検討をお願いいたしました。
候補になる着物が複数あってどれにしようか迷う場合や、どれが雛人形に似合うか相談したい場合は、気になる着物は全部送っていただければ制作側からの視点からのアドバイスをさせていただきます。
もちろん、最終的にはお客様の好みでOKなのですが、そうはいっても悩みどころの一つです。ぜひお気軽にご相談ください。
お姫様用に選ばれた御着物(羽織)
ピンク系の赤に菊柄を一面に配した羽織。
裏地には白地に扇型の中に梅の木が描かれた可愛らしい図柄を見て取れます。
この裏地もぜひ使いたかったのですが、生地の経年劣化を考えて断念いたしました。
お殿様用に選ばれた御着物
こちらの着物はシャリ感のある大島の着物です。
墨色の地に規則的な文様が総柄で描かれています。
状態は非常に良く、裏地の赤も全て利用可能です。
また、裏地の赤は上半身と下半身で少し色目が違うため、
別々に利用させていただくことを検討。
柄の配置やデザインの構想について
まずは、いくつかの重ねの候補を作成しました。
画像データからサンプルイメージを作成しお客様にご提案。
殿のサンプルイメージ
殿のイメージはこのようになりました。
束帯の裏地には、実際の着物の裏地の上半身分に使われている発色の強い赤の生地を使用し、アクセントとなるラインが見えるようにしています。
背帯には、姫に使われている生地をもってきています。これによってペア感がしっかり演出されます。
姫のサンプルイメージ
唐衣と表着でそれぞれ二つの着物を使用することを提案し、
重ねの種類を3種類用意しました。
萌黄の重ね
色々の重ね
紅梅の重ね
また、
何度かヒアリングをしたうえで、オレンジのお色が好きという事をお聞きいたしましたので、
こちらからさらに3つの重ねを提案いたしました。
櫨紅葉の重ね
櫨山吹の重ね
琥珀の重ね
追加の3パターンはお客様から望まれた訳ではなかったのですが、
当店としてオレンジ系の重ねを作って見たかったという事情もあり
あえて色検討をいたしました。
最終決定の重ね
最終的には「紅梅の重ね」での制作をご希望となりました。
ちなみに「紅梅の重ね」は当店でも一番人気の重ね色であり、多くの方がご満足いただいている配色となります。
姫の袖への特殊加工の提案
今回は、姫の袖に加工をするご提案をしておりました。
袖の菊の部分に少しだけ友禅を挿し、花びらを上品な色合いに仕上げます。
以下の画像は加工前のイメージ図です。
こちらの加工もお客様からは了承をいただきました。
帯の選択について
着物の制作が進み藁胴に着せ付けをする前に、
雛人形の帯のデザインを決定する段階になります。
その際、当店ではいくつかの候補からお客様へ確認のご連絡をいたします。
なるべく制作途中においてもお客様ご自身が介入できるようにしています。
なぜなら、勝手に作って勝手にお届けするような人形の作り方であれば、
当店の「着物雛」でなくても良いからです。
想いのこもった着物雛だからこそ、制作段階でもご自身で色々考えたという経験が必要だと考えています。
毎回、いくつかの帯の候補のなかからお選びいただいております。
着物雛の帯は、以下のように夏物の帯締めから選ぶ事もあります。
もちろん、他の物のありますが、
着物関係の商品も、過去に使ったものと同じものがまた手に入るということが難しい業界です。
ですので、毎回いくつかの候補をそろえてご提案するようにしています。
殿の帯の種類について
<殿-帯>ベージュ
<殿-帯>灰白-波
<殿-帯>青白ー波
<殿-帯>薄いグリーン
<殿-帯>薄水色
姫の帯の種類について
<姫-帯>オレンジ-波/h4>
<姫-帯>格子に桃波
<姫-帯>薄ピンク-綾
<姫-帯>薄黄桃-綾
<姫-帯>薄水桃-綾
着せ付け前と、着せ付け中の作業記録
帯が決まりましたら、あとは着せ付けをするのみです。
ここから、実際の雛人形制作にはいります。
私個人としては、雛人形は、衣装や小物などの部品づくりの時間がとても大事なのだということと思います。
全ての部材がそろって最後、人形を作り命が吹き込まれる。
そういう印象がありますね。
殿の着せ付け作業
姫の着せ付け作業
前もってご提案しておりました友禅挿しも綺麗に出来上がっております。
このまま最後の完成まで仕上げていきます。
完成したはこちら雛人形
着物の柄をお雛様のどの部分に持ってくるか、
着物のデザインを引き立てる「重ね」の色はどうするか、
雛人形の帯の色・デザインはどうするか、
裏地の色はどうするか、
首元から見える中の装束の色はどうするか、
などなど、
お客様からあずかった「着物」以外の部分でも決めることはたくさんあります。
この作業では、わたしたち製作者、デザイナー、職人が頭を付き合わせて何度も検討比較して決めていきます。
「きものひな」と一緒にお届けする思い出の形
当店ではお雛様を作って終わりではなく、その「前」と「後」の形も大事にしたいと考えています。
つまり、雛人形の前にあたる「着物」と、仕上がった「雛人形」です。
WEBアルバム
「きものひな 「菊縞に紅梅」 」
WEBアルバムは、「きものひな」をご依頼された方に必ず無料で制作しています。
お客様個別の専用URLで制作するので、「お気に入り」に登録しておけばいつでもアクセス可能です。
※このページはお客様のご要望が無い限り削除することはありません。
また、個人が特定される情報は一切公開いたしません。
・思い出の着物の姿を残しておきたい
→裁断してしまうとどんな着物であったかが分からなくなってしまいます。
・飾り付けの季節が終わっても、いつでも雛人形を見たい
→雛人形の形や柄、お顔などを高画質な画像でいつでも見れるようになります。
・SNSや手紙、年賀状などで綺麗な写真を利用したいがうまく撮影できない
→人形業界専門のカメラマンが最適な色合わせで撮影します。画像はどうぞご自由にお使いください。
このようなお声から、今年からこの試みを始めました。
実際に高画質の画像も作成することで、お喜びいただく声も多く寄せられています。
フォトブック
また、印刷物としてフォトブックも無料でお作りしています。
フォトブックにはお客様から画像をいただいて挿入することもできます。
たとえば、ご自宅に飾った画像や、着物にまつわる思い出の方の画像(お母さまやお孫様など)、その他ご希望の画像がございましたら画像をいただいて制作しております。
ご年配の方でパソコンやスマホといったデジタル機器をお使いになられない方にもお喜びいただいておりますが、
いざ作ってみると若い方でも、このフォトブックが嬉しかった!といってくださる事がわかりました。
「きものひな」の制作ブログ
まだまだ途中ですが、少しづつ「きものひな」の制作工程を紹介するブログを書いています。
作ってみたいけど不安だな。という方や、どういう仕組みでつくっているのかなという方へ少しでも参考になればと思います。
ブログ一覧はこちら
また、「きものひな」のご案内ページはこちらです。