上巳の節句 桃の節句

雛人形のタイプについて<素材による作り分け>

雛人形には作る素材によっていくつかのタイプがあります。
基本的には着物を着た雛人形がオーソドックスですね。
それでは、いくつか見ていきましょう。

雛人形タイプ1 「衣装着」

一般的なお雛様であり、だれが見ても雛人形とわかるものです。

<これは大阪の松よし人形の動画です。松寿ともいわれています>

 専門的には有職雛(ゆうそくびな)という形式の雛人形になります。
有職故実にのっとった衣服を着ています。
※内裏雛とは男性の人形を指す言葉ではなく殿姫一対で「内裏雛(だいりびな)」とよびます。

このタイプは大きいものから小さいものまでたくさんあります。
時代とともに人気は縮小しています。
また、三人官女や五人囃子、随身などのお付きの方たちもいろいろといます。
素材は、太い針金を芯にした藁(わら)の胴体をもとに、着物を着せて作ります。
着物を着せるといっても、本当に着物を着せているものもあれば、
着物に似せた生地を巻いているようなものもあります。

雛人形タイプ2 「木目込人形」

こちらも歴史は古く、よく見る作りです。
あまり意識しないと「衣装着」と同じよう見てしまっている方もいます。
以下の動画は、木目込人形製造販売元として老舗の真多呂人形さんです。


このようなタイプが「木目込」というタイプになります。

特徴としては、目が「手描き」、お姫様の髪型が垂らし髪というのが一般的でしたが、
最近は「衣装着」と同じく目にガラスの入れ目を使い、髪型も衣装着同様の「おすべらかし」が多くなりました。

着物の衣装のようにかさばらないので、かねてよりコンパクトな作りが多いです。
素材は、胡粉をもとに作った桐塑(とうそ)が使われます。このことから木製という言い方もできます。
また、細かく生地を変えたりできることから、様々なデザインを容易に反映することができます。

コンパクトでデザインに優れるというこれらの特徴から、近年様々なメーカーがデザイン性を高めた木目込人形が販売されています。

雛人形タイプ3「陶器」

 陶器のお雛様というと代表的なメーカーはスペインの伝統的メーカーである「リヤドロ」です。
中世のヨーロッパから伝わる伝統的な技法・製法が現代まで脈々と受け継がれ、日本の伝統的な雛人形を表現するに至りました。


リヤドロ 雛人形のページ

 とはいえ「陶器」という素材タイプ、基本的にお節句用には選ばれません。
なぜなら、雛人形には初節句のイベントという以上に、伝統や文化そして日本的な感覚・知識の継承という意味があります。単に国籍だけの日本人ではなく、価値観や感覚を育てる(刷り込み)があるわけですね。
そしてそのように育てられた感覚をもつ親が選ぶお雛様ですから、やはり「衣装着」や「木目込」が雛人形らしいという感覚になります。
 陶器タイプには国産の焼き物ももちろんありますが、それはそれです。雛人形という伝統を継承してきた方ではないので、結局は陶器製造メーカーが商品展開の一環として製造しているだけです。

 ただ、消費者として伝統や文化を継承などを意識するのは重たいですよね。デザインを重視したり、インテリアとしての用途や、自分自身の感覚も重要です。そういう選び方をされても、良いと思います。

雛人形タイプ3 ちりめん細工やその他

 その他、様々な素材で作られ商品化されています。お土産屋や季節物売り場、催事場などでは安価なちりめん細工であったり、金属でデザインされたモダンなもの、タペストリーに人形の形の生地がはってあるものなど、とにかく色んなものが並びます。

 基本的にこれらすべて「雛人形」としては扱っておらず、「雑貨」という扱いです。季節の雑貨であったりお土産品であったりという扱いです。これは、安いからということではなく、販売する側からすると、「どういう意味でだれが作ってますか」という考え方があるからです。

 雛人形は仕業ではないので誰でも作れますし販売できるのです。なので、伝統工芸士・伝統工芸品という指定がなくともよいのです。このことから、雑貨品製造メーカー含め異業種が雛人形っぽいものを売ってもいいのです。
 そして消費者がそういう商品を雛人形として購入することもよいのです。昔は、紙を切って人型にしたものを「流し雛」といって厄をのせて川に流していました。
 だから、紙でもいいじゃんとか、お守りなんだから何でもいいじゃん、ということが言いやすいのです。その通りです、なんでもいいのです。
 
 つまり、このような考えやこのような物とは、雛人形産業・業界というのは全く別のものということです。価値観や考え方、思想、論理、いろいろな面で「雛人形」か「雛人形っぽい商品」かが別だということです。
これは説明が難しいことなので、別の記事でしっかり説明したいと思いますが、要するにこれらの分類の商品はすべて「雑貨」と考えています。

それを踏まえて、何も知らずに雛人形として購入するのではなく、こういうことを知ったうえでもなお雛人形として購入するのであればよいのではないでしょうか。