御節句品では、時折「印伝」という言葉に出会う事があります。
この印伝は、五月人形をはじめ、破魔弓や雛人形でも使われることがあります。
・印伝とはなにか
・どういう使われ方をするのか
・どういった効果があるのか
といったことを紹介したいとおもいます。
「印伝(いんでん)」とは
鹿の皮を加工(なめして)し漆で細かな柄を描いた革製品全般を指します。
日用品としては財布やバッグなどにも使われていますし、
革素材としても販売されています。
伝統工芸品として指定されている「甲州印伝」の山梨県甲府市が有名ですが、
昔は、奈良県の「奈良印伝」など日本の各地で生産されていました。
※名前の由来は、インドから伝来したというところから印伝と呼ばれているという説もあります。
印伝の特徴
・細かな繊維のためとても柔らかく、肌さわりがしなやかで軽い。
・強靭で耐久性があり、引き裂きに強い。
・適度な伸縮性と強靭な耐久性に優れ長期間の使用でも衰えない。
・毛穴の数が非常に細かく多いことから、通気性に優れている。
・耐水性に優れている。水に濡れても硬くなりにくい。
・保温性・吸湿性・吸水性・帯電防止性に優れる
鹿特有の皮膚組織
ちょっと脱線しますが、鹿の皮がどれくらい良い革なのかという理由はその組織にあります。
鹿は皮膚を構成する線維が他の動物に比べて群を抜いて細く、その極細線維がより集まって1本の細い線維束となり、その線維束が緻密に絡み合う構造でできています。
さらにその線維にはコラーゲンをたっぷり含むため水に強いうえに老化しにくく、レザーのカシミアと言われるほど、人肌のようにしっとりと柔らかい風合いが保たれるのです。
鹿の皮の種類
ディアスキン・・・メスの鹿の皮
バックスキン・・・オスの鹿の皮
セーム革・・・子鹿の皮を植物性オイルでなめしたもの
それぞれ適した用途があります。
印伝はディアスキンをなめして作られます。
「印伝」の御節句品代表である鎧・兜
日本の鎧は、昔から印伝が使われています。
・軽い・・・動きやすい、動きを妨げにくい
・強靭な耐久性・・・刀で切られても鹿革が引き裂かれにくい
・通気性が良い・・・汗をかいても蒸れにくい、蒸れても乾きやすい
・耐水性が良い・・・雨や汗による劣化が抑えられる
などなど、
甲冑の用途においては非常にてきしたものでありました。
そこかしこに現存する日本の甲冑でも印伝の部分が比較的綺麗に残っているものが多いです。
「印伝」の柄・デザインから見るお節句品
印伝に描かれている模様は漆を顔料としています。
そして、その柄もさまざまなものがあります。
御節句用に使われる印伝の柄で多いのは「トンボ」柄です。
トンボは前にしか進まないという不退転の意味があり、戦国時代には好まれた柄です。
この意味から、五月人形の印伝にも多く使われています。
最後のいくつかの商品に使われている印伝を紹介します。
また、興味があればYoutubeでもたくさんの動画が上がっているので、制作工程などを見てみるのも良いと思います。