衣装は雛人形の印象に一番影響することから、様々な素材やデザインが使われます。
パート1では
・正絹(しょうけん)、シルク
・西陣、西陣織(にしじん、にしじんおり)
・刺繍、手刺繍(ししゅう、てししゅう)
について
パート2では
・帯・帯地(おび・おびじ)
・本着せ(ほんぎせ)
についてご案内しました。
引き続き違いの説明をしたいと思います。
衣装の説明に使われる言葉・単語パート3
今回も実際の着物にも使われる手法の衣装が出てきます。
生活に馴染みが無いかもしれませんが、日本の織物としてはスタンダードな技術のものです。
縮緬(ちりめん)
縮緬は、簡単に言うと生地表面がデコボコした織物になります。
製法も簡単に説明するならば、
経糸(たていと)にまっすぐの糸、緯糸(よこいと)には撚りをかけた(ひねった)糸を使い、
それを交互に織り込んだ生地を精錬することで凸凹状の「シボ」ができた織物です。
こうして出来上がった縮緬生地のメリットはというと、
・シワになりにくい(すでにデコボコしているから)
・伸縮性がある(糸が縮んでいるため、引っ張ると伸びる)
等から、しわになってほしくない高価な着物などに需要がありました。
最高級のシルクの縮緬として丹後ちりめんがあります。
※現在はシルク以外でも様々な素材において縮緬が制作されています。
ヨコ糸が「一本」か「二本」の違いによって一越(ひとこし)と二越(ふたこし)というタイプがあります。
ヨコ糸が「一本」の一越(ひとこし)は
正絹のちりめん衣装はとてもシボが細かいので、見た目・触り心地ともに繊細な印象です。
高級品として扱われます。
ヨコ糸が「二本」の二越(ふたこし)は
使っている糸が多くなり、シボが大きくなることから伸縮性が上がります。
一越タイプより少しお求めやすくなります。
昨今はポリエステルによるちりめん生地も多くなりましたので、雛人形だけでなく、小物や雑貨にも気軽に安価で使われています。
雛人形に使われる縮緬は正絹以外は見たことがないですが、風合いや手触りが抜群に良く、視覚的にも品の良さが感じられます。
絞り(しぼり)
生地の一部をひもで縛ったりすることで、染色工程時にその部分への完全な染色を妨げ模様を作り出す製法です。
絞った部分がデコボコする立体加工になります。
雛人形ではそれほど多く使っている作家はいませんが、いくつかのメーカーさんで上手に使われているのをたまに見ます。
鹿の子絞りのものは、「羽子板飾り」でも使われるのを見たことがあります。
女の子の縁起物ということもありピンクや赤を使っているため華やかで豪華なしあがりです。
雛人形では「有松鳴海絞り」という衣装のものを見たことがありますが、好みがわかれるだろうなと感じました。
友禅(ゆうぜん)
友禅とは、簡単に言うと「染め」です。
その染め方によって、様々な技法や産地の特色があるという、とても分かりやすい言葉です。
[ 産地としての特徴 ]
・京友禅・・・豪華で華やかな色彩、金・金箔などを使う。刺繍も金駒刺繍のよう豪華な装飾が入る。ただし、そうではなく柔らかい色調や味わいのある風合い、詫び錆びのある情景などが感じられるものも多い。
・加賀友禅・・・刺繍や金は使わない。花や草などの植物を描く。「加賀五彩」と5色を色のベースとする。虫食いを描く文化がある。
産地はほかにもありますが、雛人形には京友禅が使われることが多いです。
ただ、友禅は染めですので、だれがどこで染めようと「友禅」といいますし、現在は染める工程自体が一般の方が思っている作業ではない場合があります。たとえば、エアブラシでぼかしを描いたり、大型インクジェットプリンターでプリントすることも、公式に「京友禅」となります。
京都友禅協同組合のこちらのサイトでは、制作工程や製造にかかる道具・成果物の紹介が見れます。
エアブラシやインクジェットプリンターを使っていても、相応の技術が必要なことが分かります。
つまり、過去から現在に至るまで、友禅の技法は時代のテクノロジーを吸収し進化をしていると捉えることも必要です。
まとめ
今回は縮緬(ちりめん)・絞り(しぼり)・友禅(ゆうぜん)の衣装の意味を案内しました。
どれも、見た目の印象に与える影響が大きいものになっています。
簡単に要約説明すると、
・縮緬(ちりめん)とは生地自体の製法で、ちいさなシボ(でこぼこ)があり、手触りや風合いが気持ち良い。
・絞り(しぼり)とは染色の技法で、立体加工とぼかし染色からなる独特のデザイン。
・友禅(ゆうぜん)とは染色の技法で、染めの事を意味し、様々な技法によって特色があって楽しめる。
となります。
友禅についてはもっと深い説明もしたかったのですが、かなりディープな内容になってしまい、雛人形選びという観点からは脱線してしまうので、改めて別の機会にご案内できればと思います。