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雛人形の選び方(5) [作家の違いから選ぶ1 小出松寿・清水久遊]

大きさ、顔、衣装、と見ていくと、今度は「誰が」作っているのかということが気になってきます。

お雛様を選ぶ過程で雛人形の良さを知っていくと、どんどん知りたくなっていきます。
そうなると、大きさ・顔・衣装が同じような雛人形同士でもちょっと形が違うなという所に目がいくわけです。

形が違う=着付師が違う

ということで作家(着付師)が違うという事になるわけです。
作家が違うと何が違うのか、具体的にはどう変わるのかという事も紹介します。

有名作家とその特徴について

 どの業界においてもそのオピニオンリーダーとなるものがいて業界を引っ張るのですが、雛人形業界においても同様の事があります。
伝統の都京都の人形司(にんぎょうし)達、人形の町岩槻・鴻巣の節句工芸士たち、雛具の里静岡で引き継がれる職人技、日本各地で技を磨く工房や作家たち、
そういう中で今現在はどういう作家が注目を浴びているかを紹介したいと思います。

清水久遊(しみずくゆう)とその特徴


 近年の専門店・百貨店において押しも押されもせぬ人気の作家は、愛知県蒲郡市にある工房「ひいな」の清水久遊(しみずくゆう)です。いまや人形店においても品ぞろえとして必須とも言えます。

人気の理由は、
・百貨店でのおすすめである
・女性ならでは感性
・美しいと感じる分かりやすい色と形
・価格とのバランス
ということと考えます。

百貨店でのおすすめであるということ

 数年かけてゆっくりと百貨店がブランディングをしてきた経緯があります。百貨店と「ひいな」との間には、しっかりとしたプロデューサーとなる企業がいます。その企業が時間をかけて商品開発を続けてきたという苦労も忘れてはいけません。
 どの業界でも同じですが、作家や工房だけのチカラで成長するわけではないのです。陰ながら苦労をする人や会社もあるのです。
また、その苦労を掛けるに値するほどの「ひいな」の人形は美しい素体であったことも重要なポイントです。
百貨店で人気のある作品は、専門店でも人気があります。

女性作家であるということ

雛人形は女性のものです。
この伝統が作り出す美しさ、華やかさには物語や歴史がたくさんつまっています。
それを、女性が作り出すというストーリーは、最大の消費者であるママさんには共感するポイントでもあります。

同じ女性が、同じように我が子を想う気持ちで雛人形を作る姿を想像すると、得も言われぬ安心感が生まれます。

美しさが分かりやすい

伝統的な雛人形は、その美しさを理解するために知識や教養を求めるものもあります。
また、玉石混交の世界に見られやすい人形業界、良し悪しのわかりづらい世界であるという事も否めません。
そんな業界において、比較的わかりやすい美しい形を作り上げたのが、清水久遊の雛人形です。
袖の形はしなやかに波打ち、着物の襲(かさね)はグラデーション、末広がりで低重心の造形、セットされる屏風やお道具のシンプルなデザイン、こういった部分は、現代人の感覚に抵抗なくすっと入ってくると思われます。

価格

清水久遊の雛人形でシンプルなセットを見ると大体が20~25万円位のものが良く見られると思います。
予算としてはハイクラスの入り口あたりですが、この価格帯がバランスが良いのです。
また、販売する側、仕入れる側としてもとても良い価格であるといえます。
このあたりは、また別の記事でまとめたいと思います。

まとめ

生産者、販売者、消費者の三方良しの商品づくりであると感じ、工房ひいなの人形の形やデザインが好きな方であれば選ぶことに間違いは無いです。
※清水久遊の人形の特徴については、別途詳しい記事にまとめたいと思います。

小出松寿(こいでまつよし)、酒井 一翔(さかいいっしょう)とその特徴

人形工房松寿(にんぎょうこうぼう しょうじゅ)として、大阪府東大阪市で雛人形・市松人形を中心に製造し、全国の有名百貨店(高島屋、大丸、阪急等)の納入業者、人形専門店へ届けています。
百貨店においては、「小出松寿」という作家名のほか、同社内の熟練の職人である「酒井 一翔」の作名でも商品展開をしています。

人気の理由は、
・百貨店での長期的な取り扱いがある
・玄人好みの作りと重み
・厳密な品質管理・商品管理
・価格とのバランス
ということと考えます。

百貨店での長期的な取り扱いがある

長年百貨店で出品されてきた経緯があります。
百貨店で取り扱われるメーカーは、非常に厳しい品質の管理が求めら、それゆえに商品である人形そのものはもちろんのこと、付属品である桐箱や小道具から、資材である緩衝材や段ボールの品質まで他社には無い管理体制をしいています。これが、小売店含めすべての取引先の信頼につながっています。

玄人好みの作りと重み

松寿の雛人形の特徴は、かっちりとした作りにあります。左右の対称性を高め、生地が強く張っていて、綿を厚くしっかりと詰めた胴体。
頭は、「市川伯瑛(いちかわはくえい)」か「藤澤瑞馨(ふじさわずいけい)」のどちらかとなります。
 ※工房松寿だけの専用頭であるため同じお顔の人形は他社ではつくれません。
松寿の着せ付けは、専門的に言うと「強装束(こわしょうぞく)」いい、強張った直線的な姿・出で立ちであり生地の強さや糊のきかせ具合によって表現するタイプです。
この「有職雛」に準ずる風合いこそが、玄人が好む味わいとなっています。

厳密な品質管理・商品管理

百貨店のくだりでも説明しましたが、品質管理の高さこそが人気を支えています。
小売店に納品された状態を見比べると、どのメーカーよりも綺麗に整頓された美しい状態で納品されます。通常、納品された雛人形は、お客様へ出荷する前に検品をします。
職人や工房から小売店に納品された状態というのは、そのままお客様へお届けできないメーカーも多いのです。
糸くずや髪の切れ端の混入や、頭の向きなどがあったり、梱包材(紙や空気パッキンなど)が少し変色していたりというところまで見ていくと小売店が集荷時に梱包しなおすことも多いのです。
しかし、工房松寿ではそのような心配や作業は全く必要ありません。素晴らしく梱包状態が美しいのです。
これにより各地の人形専門店も安心してお客様へ紹介することができるので、よりたくさん販売したくなるのです。

価格とのバランス

これまので様々な見えない努力=コストをかけているのにも関わらず、価格としては25~30万位のセットが多くなっています。
確かにハイクラスの価格帯ではあります。しかし、京都の作家を比較すると、品質に対する価格としてはとても安いと感じられ、それゆえに人気があると考えられます。

まとめ

品質管理の厳しさや、アフターフォローの丁寧さが際立っているため、販売店も小出松寿をおすすめする店も多くなっています。
これは言わずもがな、消費者目線で考えても安心できる作家という事です。
※「工房松寿・松よし人形」の人形の特徴については、別途詳しい記事にまとめたいと思います。