工業製品とちがい、手作り品である工芸品には必ず作り手がいます。
作り手は作家と呼ばれたり、「着付師」と呼ばれたりしますが、消費者にとって商品選択の大きな指標となります。
今回はその指標としてとても重要な「作家」の実態について説明をしたいと思います。
作家とは
雛人形業界における作家とは、衣装着においては「着付師」と呼ばれる方たちで、雛人形そのものを仕上げる人を指します。
雛人形は分業で作られます。一つの製品を部品にわけて、その一部品づつを別の人(会社)が作り、それを集めて一つの人形に作り上げる作業です。
「部品」の状態とは、
頭(かしら)、手(手首から先のみ)、生地、藁胴(わらどう)
となります。
姫の場合は、上記の部品のなかの「生地」という部分が殿よりも多く、数種類を必要とします。
殿の場合はこれらに加えて、
足(足首から下のみ)、石帯(腰に巻くベルトのようなもの)、魚帯(石帯に括り付ける四角い鞄のようなもの)
を追加で使う場合もあります。
これらは後ろや下からしか見えない部品になるので、コストを落とした商品には省略される場合があります。
ただし、これらがないからと言って安物というわけでもありませんし、
これらがあっても安価な場合もあります。
つまり、同じ生地(生地は価格差が大きい)を用意できれば、どこの工房でも原価はほとんど変わりはありません。
ここから先の作業によって価値が変わってくるのです。
※たとえば違う二人の着付師が衣装とお顔が全く同じ人形を作っていることもあります。この場合もちろん着せ付けされた人形の形は違います。
ここに、刀や扇などの「親王小道具」が入っていませんが、この「親王小道具」は小道具メーカーが1セット単位で製造していますので、人形作家は、仕上がった自分の人形のサイズに合う大きさの小道具セットを仕入れて付属させているだけです。
作家の違いは「着せ付け」にあります
着せ付けとは主に、「着物を着た人形の形」のことを言います。
人形作家とはそれぞれ「独自」の着せ付けを形作ることで「作家」となります。
画家やアーティストに近いかもしれません。
どんなに上手な絵を描く人でも自身の「絵」がない人は、画家とは呼ばれないし、
どんなに歌がうまくて楽器が上手に弾けても、自身の「歌」がない人はミュージシャンとは呼ばれません。
人形業界でも同じであって、どんなに上手に着せ付けができて、どんな着せ付けも似せて作れても「作家」とはいわれません。
そして、「伝統工芸士」として独自の形を作り上げた作家であっても、百貨店や全国的な量販店と取引が無ければやはり有名にはなりにくいです。
この、あまり名前が知られていなくても技術が高く品質も高いこだわりの作家という方を今後なるべく紹介していきたく思います。