上巳の節句 桃の節句

節句人形販売員が知っておくと便利な知識 [重ね色目]

御節句の言葉には、一般生活に馴染みのない言葉がたくさんあります。
それを丁寧にお客様に説明できるようになれば、お客様との信頼が築いていけます。

今回は、雛人形でよく聞くことの多い「重ね」や「重ね色目」について紹介したいと思います。

[重ね色目]とは

そもそも重ね色目とは、3つの意味があるという事をご存じでしょうか。
私も最初は重ねの色を調べようと思っても、2色で表現したり、複数の色で表現したりといった、説明の仕方が色々あってよくわかしませんでした。

しかし、意味が別々なのだという事を知り合点がいきました。

重ねの意味 一つ目「表裏の重ね色目」

重ねを2色で表現したものを説明しているサイトもよく見かけます。
これは、そもそもシルクの生地はとても薄く織られていたため、裏地の色が透けて見えることを利用した表現方法です。
表が白で裏が赤であれば、見た目はピンクに見えるわけです。これを「梅」といいます。
これによって、季節感、植物の色、花の色、それにその人の年齢や格を表現しています。

重ねの意味 二つ目「衣の重ね色目」

良く十二単という言葉があります。もちろん十二枚の単を着ているという意味ではなく、「十二分に」たくさん着ているという意味だといわれています。
これだけ着ると、様々な色の衣を重ねていくことで、色で無限におしゃれができそうですよね。
これが、衣の重ねです。
例えば赤系統の同色でグラデーションを作ると「紅の匂」と言います。
グラデーションの事を「匂(におい)」と呼びました。

また、上の衣より下の衣のほうが色が濃いと「裏倍(うらまさり)」と呼びました。花の「花びら」と「がく」を表現したようです。
また、グラデーションをしたのちに最後は「白」になる色重ねは「薄様(うすよう)」と呼びました。

重ねの意味 三つ目「織色の重ね色目」

織物は経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと・よこいと)の色を変えて織ることで、玉虫色の輝きを表現しました。
見る角度によって色が変わって見えたりすることもできたようです。

雛人形における「重ね」

このように、違った意味のある重ねですが、雛人形の現場においては「衣の重ね色目」の事をさすのが一般的です。
そして、現代においては様々な色が表現され、過去の色の組み合わせに沿った物だけでなく、作家やデザイナーによる独自のパターンも多くなりました。

人は、8割がた色で商品を選ぶそうです。
それは私もわかる気がします。

ちなみにこの重ねについてのお話は以下の本を参考にしています。


重ねに限らず、衣装・装束についてわかりやすく書いていますので、ぜひ読んでみてください。